うんち君のこぼればなし
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戦車に乗る

 我が家のトイレには144分の1のミリタリー模型が80個程並んでいる。いわゆる『食玩』というやつで、少し前にヒットした『ワールド・タンク・ミュージアム』のシリーズだ。子供の頃から戦車好きで、タミヤの1/35ミリタリー・ミニチュア・シリーズを作りまくった過去がある私からすると、この商品に手を出さないわけにはいかない。1個300円程度とは言えども、これだけ買うと2万円を超えているわけで、結構馬鹿にならない。でも、こんな縮尺とは思えない素晴らしい出来の模型を眺めていると、なんとも楽しい。このシリーズ、最近売ってないからもう終わりなのかも知れないが、私のお気に入り戦車、イギリス軍のマチルダがまだ出ていないので、やめるならそれを作ってからにして欲しい。お願い。

 とお願いしたが、実のところはどっちでもいい。たまたまああいうシリーズが発売されたから買ったけれど、プラモデルは中学時代でやめてしまったし、それ以降は別に戦車を追いかけて生きてきたわけではない。模型をパタッとやめた後は、大学時代まで映画館に通い詰めていたし、洋楽を聴きまくるようになったのも同時期のことだ。だから現在の我が家には『ワールド・タンク・ミュージアム』以外、戦車に関するものはほとんどない。その程度の興味ということで、要するに普段はほとんど戦車について考えることなどない。

 だがしかし、我が家の近所には自衛隊の駐屯地がある。そして何年か前にその敷地内に自衛隊の広報センターなるものが出来た。そこには戦車やヘリなどの本物が展示してある。常設なので行けばいつでも見られるが、そのセンターが開館した時、こんなお知らせがあった。

『戦車に乗れる!』

 そりゃもう、乗りに行かなきゃいけない。自衛官でもないのに、本物の走る戦車にそうそう乗れるもんじゃないのだ。

 というわけで、夫婦で戦車に乗りに行った。戦車に乗る人はまず第二会場なるところへ移動する。広い駐屯地のことだから、バスでお客さんをピストン輸送しているのだ。まず、このバスに乗るためにしばらく並ばなければならなかった。戦車に乗るからといって、並んでいるのは子供連ればかりではない。特に戦車好きという雰囲気でもなさそうな婦女子(腐女子じゃない)も、面白そうってことで結構並んでいるようだ。30分以上待たされただろうか。ようやくバスに乗ると、数分かけて駐屯地内を移動した。

 バスを降りると、広い敷地内にさらにいろいろな軍事車輌が展示してあった。ライフル等の小火器なども置いてあって、手に取ることが出来る。が、それを見たのは後のこと、とりあえずは戦車に乗るための行列に再び並ばなければならない。これが尋常じゃない長蛇の列だったが仕方ない。少し離れたところでは我々が乗る戦車が轟音を響かせて走っていた。その戦車とは、74式戦車。一代前の日本の主力戦車だ。現主力戦車の90式に比べると砲塔が小さい。90式の砲塔は四角い形で、砲身が前面を向いている時には車体後部の大部分を覆っている格好だが、74式の砲塔は丸くて、車体後部上面は常に露になっている。だからここに人が乗っても、砲塔の動きに影響されることはない(もっとも砲塔は動かさなかったけれど)。そしてまさにそのとおり、その特徴を生かして、74式戦車は車体後部に人を載せて走っていたのであった。

「あれぇ、あんなとこに立って乗ってるじゃん」

 戦車の車体後部には高さ1m以上ある四角いカゴが取り付けられていて、お客さんたちは10人ぐらいずつ、手すりにつかまって立っているのだ。その光景を見て私はかなりがっかりした。戦車に乗れると言われれば、当然車内に入れてもらうものだと思うだろう。これでは、

「車に乗っけてってやろうか」

 と言われて、ボンネットに載せられるようなものだ。目新しくもない乗用車の場合、かえってその方が珍しくて楽しいかも知れないが、戦車に乗るとなったら、中を見れると期待するのは当たり前のことだ。多少不満があるが、戦車に載せられる機会もそうそうあるわけじゃないので、ここは妥協することにした。

 待つこと実に1時間半。退屈地獄を乗り越えて、ついに74式戦車に載った。

「手すりにしっかり掴まって下さい」

 自衛官の言葉には当然従う。振り落とされて踏まれでもしたら悲惨極まりないから。結構高さがあるので、踏まれなくても落ちただけで結構怪我をするかもしれない。子供は後ろに自衛官が立って、しっかりガードしている。

「それじゃ、発車しまーす」

 走り始めは「ガックン!」だ。走り途中も「ガックン! ガックン!」だし、「ゴガガガガガー!」で「ブモー!」だ。加速減速旋回はとにかく急激で、モウモウと排気を出しながらえらい騒音と振動で走る。そりゃもう最悪の乗り心地だった。きっと車内は騒音と振動がさらに凄いことになってるんだろうなあと想像したが、やっぱり確認してみたい。とはいえ、あの中に入って何時間も何日も走っていたら、それだけで心身が参っちゃうだろうし、その上、砲撃なんてした日にゃ、どれだけとんでもないことになるのか想像も出来ない。ご苦労様です。

 プラモデルやゲームで眺めているぶんにはいいけれど、さすがに実際の戦車はまったくスマートな乗り物ではなく、相当に泥臭い『重機』だった。

 このイベント、毎年各地の自衛隊でやってると思うので、気になった方は行ってみるといい。子供連れだと、抽選でヘリに乗れるってのもあるようだ。

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