フランク・フリップ
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ソフト・ワークス 〜Soft Works〜

 2003年8月9日、台風10号の影響で強風吹き荒れる中、私とジャンクさんとでソフト・ワークスのライブに行ってきた。ソフト・ワークス、すなわちソフト・マシーンの成れの果て、お爺さんカルテットだ。今回このプロジェクトに参加しなかったカール・ジェンキンスが、『ソフト・マシーン』という名称の使用権を認めなかったため、こんな名前になった。オリジナル・メンバーでもあるまいし、何を偉そうなカール・ジェンキンスめ、と思えども、今回の4人の中にもソフト・マシーンのオリジナル・メンバーはいない。

 そもそも兄と2人で行くはずだったのだが、兄が急に行けなくなったので、全く興味のないジャンクさんを無理に連れて行くことになった。人生初コンサート体験だというジャンクさんにとっては酷なライブだったと思う。お爺さんジャズはあまりにも退屈だったはずで、これがせめてクリムゾンだったらもう少し楽しめただろうと思う。

 さて、予想通り、会場の恵比寿ザ・ガーデンホール前には1人のダフ屋さえいない。商売にならないと彼らから完全に見放されたソフト・ワークスだが、それでも翌日の追加公演が決まったということで、それなりになんとかチケットがさばけたらしい。まずはめでたい。

 お爺さん達とは言えども、エルトン・ディーン、アラン・ホールズワース、ヒュー・ホッパー、ジョン・マーシャルといった面々は、プログレ、カンタベリーシーンのファンからすれば一度は目にしておきたい重鎮ばかりだ。それを最前列で見られることになっていた。ジャンクさんはもちろんだが、私としても人生初最前列だ。ホール内に入ると最前列の席とステージの近さに驚く。
「こんなに近いんだなあ」
 と感動しつつ、席を探した。我々の席は“1列5・6番”だ。イスに貼られた番号札を見てみると、
「アレ?」
 最前列は“A列”になっている。
「1列の前にスペシャルなアルファベットの列が何列かあるんだ」
 と、少しガッカリした。仕方なく後ろへ下がりながら数字の列が現れるのを待ったが、B、C、D、E、といつまでたっても数字が現れない。さすがの私もついに悟った。
「これは、1(いち)列ではなくてI(アイ)列だ!」
 ぬか喜びも甚だしい。結局は9列目なのかと思いきや、どういうわけか前のH列だけはHとhの2つの列が用意されていたので、我がI列は10列目だった。結構遠い。でもまあいい。表情もよく見える距離だ。

 ステージに現れた皆さんは、本当にいいお爺さんになっている。ヒュー・ホッパーだけは昔の見てくれの悪さが解消されていい感じに見えるが、他のメンバーはどうにも寂しい限りである。このメンバーの中で最も人気が高いのはやはりカリスマ、ホールズワースだろうが、演奏が始まると楽譜を見るために老眼鏡らしき銀縁メガネをかけちゃうところが物悲しい。

 開始前から“小休止を挟んだ二部構成”との案内があった。二部構成と言えば、普通はトータルで3時間ぐらいになるライブだと思うところだが、そこはお爺さん達、開始50分ほどで休みに入った。トータルの演奏時間は結局2時間ぐらい。“長いから二部構成”ではなくて、“体力的に二部構成”だったようだ。

 ソフト・ワークスのアルバムを聴く限り、それほど期待は出来ないかなと思っていたが、概ねその思い通りだった。一言で言えば、『おんなじ』という感想。
「この曲とさっきの曲の違いはどこに?」
 というような没個性的な曲が多すぎる。ソフト・マシーンの名曲『フェイスリフト / Facelift』なども演奏されたが、曲の個性といえば、出だしとベースのリフが他の曲と違うぐらいで、結局はエルトン・ディーンとアラン・ホールズワースのマンネリソロが長々と続くという構成で、残念ながら聴いてるほうは退屈しないわけにはいかない。リード楽器の二人とも、そのソロにバリエーションが少なくて、今までのキャリアの中で一番演奏しやすいパターンに落ち着いてしまった、という安易さが感じられる。結局は余力で演奏しているという印象で、冒険というか、緊張感というものに欠けていると言わざるを得ない。

 バンドを仕切っているのはヒュー・ホッパーのようで、曲紹介などをするのは全て彼。ソフト・ワークスのフロントマンはあくまでもディーンであって、ホールズワースはゲスト的な位置にいるような雰囲気がある。バンド内でのホールズワースの立場というのがとても中途半端な感じで、エルトン・ディーンとの仕事の分担があまり上手く行ってない印象を受ける。出番がなくてホールズワースがボーッとしているような時間が少なくないし、彼のソロ自体があまり目立たず、また引き立っていない。要するに、ホールズワースはこのバンドには合っていないように思う。ディーンに対する遠慮なのかもしれないが、なんだかとてもおとなしい。

 ジョン・マーシャルは歳を感じさせない達者ぶりだが、昔から感じていたように彼のドラムソロはなんだか面白くない。ビル・ブラフォードのドラムソロのようにワクワクさせてくれないのは、単なる私の好みだけの問題ではあるまい。ただ手数を多く叩けば良いというものではないのだ。アドリブ性の高いソロといえども、そこにはなにか整然としたストーリー性のようなもの、リズム感がなければ、雑然としたテクニックのみが押し付けられているようで、聴いているほうとしては引き込まれて行かない。残念ながら、ディーンにもホールズワースにもそうした傾向があって、なんだか無味乾燥の演奏の応酬だったなあという、ソフト・ワークス公演である。マイク・ラトリッジがいればもっと違っていただろうに、と思わずにはいられなかった。

 ライブ報告なので、短いけどおしまい。ちょっと厳し過ぎたかな?

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