フランク・フリップ
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ジェフ・ベック 〜Jeff Beck〜

 最近新譜を出したばかりのジェフさんだが、どうなんでしょう。10年ぶりのアルバム『フー・エルス! / Who else!』で本格的にカムバックして以来、『ユー・ハド・イット・カミング / You Had It Coming』、『ジェフ / Jeff』と、割と短期間に3枚のアルバムをリリースしたけれど、私にはどれも同じ調子に聞こえる。
「また、こんなんかあ」
 と、言ってしまう。なんだかせわしないリズムに、深みに欠ける音。ひとことで言うと、魂に響かない印象だろうか。還暦間近という年齢の割に、緊張感を失ったしっとりムードに変化していかない点は評価できるけれど、ただあんまり進歩がなさすぎるかなあと思わないことはない。でも、熱烈なファンからするとこれらの最近作はたまらなく素敵らしい。歳を重ねてなお新しいことに挑戦し続ける姿勢、とにかく他のミュージシャンとはレベルが違うとのことだ。私としてはその音楽性が今一つピンと来ないのだけれど。技術的にはどうなのか知らないが、知的にはあまり進歩がないように思う。今回の『ジェフ』の中の曲だが、
「ウーイェイ、アーイェイ、ウーイェイ、ベイベ、ベイベ、ベイベ、ベイベ、ベイベー」
 という歌詞はいくらなんでも、と思う。還暦前なんだから。

 孤高のギタリストと言われ、今のロックギターの基礎を築いた4人のうちの1人なんて言われ方もするジェフ・ベックだが(他の3人はエリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、ジミ・ヘンドリックスだそうな。異論もあるかも知れないけど)、この人はカリスマミュージシャンとしてはちょっと珍しい人で、自分では基本的に曲の書けない人のようである。最近ではちょこちょこ曲作りに携わっているようなクレジットも見られるけれど、それでもせいぜいが共作で、かつてはまずほとんど全てが他人に提供を受けた曲ばかりだった。要するにこの人に対するフリーク達の信仰的とも思える支持は、そのギタープレイに対するものであって、「曲が素敵!」とかいう話じゃない。私はミュージシャンをプレイヤーとしてよりもコンポーザーとして評価するほうなので、この人の人気の度合いがちょっと不思議である。

 私にはジェフ・ベックのギターがどれほど凄いのかがわからない。わかるだけの耳を持っていないので。しかし、世の中の彼に対する賛辞は並々ならぬものがあって、聴く人が聴くとやはり違うのかも知れないとは思う。でも、ほとんどのファンは、よく判らないまま、なんとなく「凄まじいプレイ!」とか「凄絶なるテクニック!」と言って気持ち良くなっているに過ぎないことは間違いない。だいたい世の中とはそんなものだ。

 一流の歌手が、他人に提供された歌を唄いながら常に尊敬を受け続けている例は少なくない。そうした歌手の価値はまさに歌唱力、存在感にあるのであって、曲が書けようが書けまいがファンにはどうでもよい。ジェフ・ベックの場合もまさに同じことであって、自分であまり曲が書けなくとも、彼独特のギターが聴けるならファンは満足する。とはいえども、さすがに曲のレベルが低ければ皆が喜ぶわけはないし、やはり彼の持つセンスと実力が一級のミュージシャンたちを選び、作品の方向性を決めて行くのだろうから、彼のアルバムがいつも充分に格好良くて楽しめるものであるのは、やはり彼の才覚による所ではある。

 だが、曲を他人に依存しているということは、やはりそれだけ当たり外れというか、出来不出来が生じてしまうもので、まったく不出来だった『フラッシュ / Flash』などは、それまでのフュージョン系傑作アルバム群『ブロウ・バイ・ブロウ / Blow By Blow』、『ワイアード / Wired』、『ゼア・アンド・バック / There And Back』に比べると、ちょっと恥ずかしくなるぐらいの作品だろう。本人としてはああいうフュージョン路線に疑問を感じて作ったというようなことだったが、センス的に私は理解できない。別にこれは私が特別に持っている感想ではないようで、『フラッシュ』について触れられると、ファンとしてはちょっと俯いちゃうという話も聞いた。結局の所、ジェフ・ベック本人の音楽的センス(ギタープレイ以外の)というものはそれほどにあてにならないものなのかなと思ったりもする。

 私は個人的には『ワイアード』が大好きだ。実はジェフ・ベックがどうこうというよりも、今はド偉いプロデューサーになっちゃってるナラダ・マイケル・ウォールデンの才能に感嘆しているという面が強い。彼やヤン・ハマーらが全面的にバックアップしなければ、ジェフ・ベックにはこれほどの作品は作れなかっただろうと思うにつけ、やっぱりギタープレイだけでこんなにも評価されるのってのはどうなのかなと思ったりする。でも、それだけ彼のギタリストとしての力が唯一無二、孤高のものであることの証明になっているとも言えるだろう。逆に言えば、ナラダ・マイケル・ウォールデンやヤン・ハマーやトニー・ハイマスやスティービー・ワンダーが一緒になってどんなに良い曲を用意した所で、ジェフ・ベックがいなければああいう作品にはならないということだ。他のギタリストでは絶対にダメ、らしい。

 なんだか分からないけど、とにかく他にはいないギタリストなんだそうな。どうも批判めいて聞こえるかも知れないが、ジェフ・ベックのアルバムは好きでいつも聴いているので、念のため。

 ちょっと付け足し。フランク(ザッパ)・(ロバート)フリップ御両人は、ジェフ・ベックとはなんの接点もなさそうに見えるが、おそらくほとんどない。ただ、割と最近、フリップ先生が、初めてジェフ・ベックのライブを観てとても楽しんだ、と報告していた。ただそれだけの話。


追記

 上にザッパとジェフ・ベックにはおそらくほとんど接点がないと書いたが、『大ザッパ論』、『大ザッパ論2』(いずれも工作舎刊)の著者である大山甲日さんより情報を頂いた。それによると、

「60年代の終わりにベックはザッパの家に赴いて、ザッパがプロデュースしたある曲に参加させてもいます。当時ザッパは自分の妹にも紹介したりで、ベックとは馬が合ったようです」

 とのことである。大山さん、ありがとうございました。


(2004/01/16 「追記」を加え更新)
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