フランク・フリップ
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ジェネシス 〜Genesis〜

 ジェネシスはプログレじゃないとか、フィル・コリンズはジェネシスをポップグループに堕落させたとか、ムキになってそんなことを言っている人達も少なくないようだが、そんなことはどうでもよろしい。好きなら聴いて、好きじゃなくなったら聴かなきゃ良い。

 もともと、ピーガブ、バンクス、ラザフォード、アンソニー・フィリップスなどが、伝統あるおぼっちゃま学校の中で作ったのがジェネシスだったようで、彼らを見ていると、なるほどというような大人しさと、お人好し具合、そしてちょっとした子供っぽさというものが感じられる。『ナーサリー・クライム / Nursery Cryme』以降、そこに加わってきた庶民の子、フィル・コリンズとスティーヴ・ハケットにとっては、オリジナル・ジェネシスの面々は随分と迫力に欠けた連中に見えただろうが、それぞれの持つ音楽センスには侮れないものを感じていただろう。

 よっぽどコアなファンでもない限り、『侵入 / Trespass』以前のジェネシスをそうそう聴くものではないだろうが、特にほんとの初期の彼らの音楽は、ちょっとひねくれたポップスといった印象で、後のジェネシスらしさがほとんど感じられない。それでも、そのメロディーメーカーとしての才能はあきらかだが、そこはなんとなく弱々しいおぼっちゃま達の音楽なのである。そこへフィル・コリンズとスティーヴ・ハケットが庶民の逞しさを加え、ジェネシスの音楽はとりあえず出来上がった。ピーター・ガブリエルが抜けるまでは、フィル・コリンズの主な活躍の場というのはあくまでもドラマーとしてのものであったろうと勝手に思う。むしろ、前期のジェネシスらしさを作り出す上での楽曲への貢献度はハケットの力がとても大きかったに違いない。どうも彼の存在価値をあまり評価していない人達が多いような気がするのだけれど。

 ジェネシスはとても民主的なバンドであり、全て音楽は基本的に完全な共同作業でなければならないといった方針があったらしい。“最もジェネシスらしい音を作る”とフィル・コリンズが評したトニー・バンクスの色や、ハケットのちょっと屈折した感覚、もちろんピーガブの味も、みんな取り込んだものが彼らの楽曲だったのだろうが、そんな音楽の作り方に欲求不満を溜めていったのがピーター・ガブリエルだった。バンドとしての窮屈さに耐えかねたピーガブは、わがままを言って、初めて自分主導でアルバム『幻惑のブロードウェイ / The Lamb Lies Down On Broadway』を作らせてもらったが、結局独立する道を選んだ。それには家族のことにもっと時間を割きたいという事情もあったようである。やはりスティーヴ・ハケットもその後抜けて行ってしまうが、彼の場合もソロ・アルバムを経験して、自分の思い通りにできるという気持ち良さにはまってしまったらしい。

 というわけで、3人が残った。3人になったら、とても聴きやすくなった。フィル・コリンズのボーカルのためか、ピーガブが抜けた時点で、既に耳に入って来やすい音にはなっていたのだが、ハケットが抜けたことでますます音が整理された感じがする。要するにポップスになったのだと言いたい人は言いたいだろうが、昔からジェネシスはポップだった。3人以降のジェネシスはもっとポップになったかもしれないが、それでも曲は長かったりするし、ただのポップスではない。

 もう20年近くも前になるが、ファーストでもないのにどういうわけか『ジェネシス / Genesis』というアルバムが出た。3人ジェネシスの総決算的な決意と自信の表れだったのかも知れないが、確かにこれは傑作であると思う。私は大好きだ。だが、エッセイの中でその人の好みを聞かされても全く面白くないことはよく分かっているので、こんなことを書いてもしょうがなかった。でも、傑作だと思う。

 つづく大ヒットアルバム、『インヴィジブル・タッチ / Invisible Touch』は余りに売れたこともあって、特に昔からのファンには大変に嫌われたようだ。これで完全にジェネシスを見放したという人達も多いだろうし、あのジェネシスが好きだという、プログレファンじゃないファンも増えたことだろう。確かにピーガブジェネシスが好きな者にとっては、あの音はあまりにも薄っぺらいし、ポップすぎるし、ジャケットもよろしくない。フィル・コリンズは、自分が目指すところはああいうポップな路線なのだと、まるでジョン・ウェットンみたいなことを言い切っているので、ますます昔ファンからは反感を買うのだが、実のところ、他の2人のポップさ加減も相当なものなのであって、特にバンクスの色があれほど強く出ているアルバムも少ないと思うほどである。要するに、3人ジェネシスとはああいうものなのだ。それはそれで良しとしないといけないかも知れない。

 フィル・コリンズが抜けたあと、ジェネシスはてっきり解散するものだとみんな思っていただろうが、良く知らないボーカリストを入れて(“良く知らない”だけではかわいそうなので、名前を紹介しておくと、レイ・ウィルソンというらしい)、バンクスとラザフォードはバンドを存続させた。そんな事実を知らない昔ジェネシスファンも多いだろうが、結局あれはほとんど無視された。そんなに悪くはないけれど、徹底的に華がないし、メリハリに欠ける。バンクスがジェネシスの音楽性に貢献してきた度合いといったら一番なんじゃないかと勝手に思うぐらいだが、結局彼だけのセンスがジェネシスをヒットさせてきたわけではなかった。むしろ、音よりもフロントマンの存在こそヒットの最大の要素だったのかも知れない。やはり、地味では売れない。必要なのは“カリスマ”なのだろう。ちなみに私は黒いカリスマレコードTシャツを持っている。ディスク・ユニオンでもらったのだが、そんなこともどうでもよい話ではある。

 さて、『トリック・オブ・ザ・テイル / A Trick Of The Tail』のころのライブにおいては、ドラマーとしてビル・ブラフォードが参加していた。その映像を見るに、とても似合わない。ブラフォードとジェネシスにはあまりにも接点がないので、彼の個性も生かされていないし、かといってジェネシスに合わせたドラミングをしているというわけでもない。なんだか、煮え切らなくて面白くない。やっぱりブラフォードはクリムゾン。どちらかと言えばチェスター・トンプソンのやわらかなドラミングのほうがジェネシスには合っていると思うが、それでもやっぱり彼もザッパとやってるときの方が良かったと思う。やっぱりトンプソンはザッパ・バンド。

 というわけで、ジェネシスを書いても、結局最後の落としどころはクリムゾンとザッパなんだなあ、これが。

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