フランク・フリップ
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バッド・カンパニー 〜Bad Company〜

 バッド・カンパニーといえば『夜明けの刑事』だ。1974年開始で2クールの放送予定だったが、好評につき111回続いたらしい。現在はCSで再放送しているようだが、なかなか良いドラマだった。坂上二郎、石橋正次(最近見ないけど、頭が禿げ上がっているらしい)、鈴木ヒロミツ(中学時代の友人、T野君の母親の従姉妹だそうな)、石立鉄男、水谷豊などが出演していて、刑事ドラマ好きな父親と一緒に毎週見ていたものだ。坂上二郎演じる人情派の鈴木刑事がいつもハンカチで汗を拭き拭きがんばる姿に心洗われる思いだった。このドラマ、音楽がとてもいい。BGMも素晴らしいし、石橋正次や鈴木ヒロミツらが歌うエンディングテーマも佳曲揃いでホロリと来る。そして、このドラマの音楽を担当していたのがなんとバッド・カンパニーだった。挿入曲で、

「よぉあぁけぇ〜のぉ〜けぇいぃじぃ〜」

 と唄っているのが、名ボーカリストのポール・ロジャース(“ロヂャース”じゃない)だったようだ。鈴木ヒロミツが唄うエンディングテーマの作曲が彼だという話もある。

「愛する人〜が〜いた〜、野菊をつん〜で〜いた〜」

 というやつかな(たしかこんな歌詞)。石橋正次の唄う、

「思い出の〜お〜か〜が〜ある〜と〜いうぅ〜」

 というやつはどうなんだろう。何にしても名曲ぞろいだ。番組内の音楽に実際どの程度まで彼らが関わっていたのかわからないが、彼らの渋いセンスがあのドラマのムードをグッと高めていたのは確かだ。番組最後のテロップにバッド・カンパニーという名前をみつけて、いつも私は「誰だろう」と思っていた。外人さんとは露知らず、ましてやブリティッシュ・ロックの名バンドだなどとは知るわけもない、当時はまだかわいらしい小学生だった(“かわいらしい”は余計だけど)。

 夜明けの刑事のサントラがあるなら是非手に入れたいと思うのだが、そんなものは存在するわけないのだろうか。情報があったら誰か教えて下さい。

 さて、『フランク・フリップ』というコーナーの立場からすると、注目すべきはメンバーのボズ・バレルだ。キング・クリムゾンの3代目ボーカリストで、フリップを大いに嫌って、他の2人(イアン・ウォーレスとメル・コリンズ)と共にクリムゾンを飛び出した人である。ボズがクリムゾンを憎むことは甚だしく、他のほとんどの連中が今はフリップと和解しているのに対して、未だに当時のことを語ることさえ拒否するような態度をとっているらしい(少なくとも10年前ぐらいの時点ではそうだった)。こんな風にクリムゾン時代を猛烈に毛嫌いしている人は今となってはボズとゴードン・ハスケルだけのようだ。ゴードン・ハスケルがフリップやクリムゾンをけなしたインタビューはなかなか面白いのだが、ここでは関係ないので触れない。また後のクリムゾンの回にでも書いてみたい。

 クリムゾンのメンバーだったということで、この『フランク・フリップ』としては多少意味のある存在のボズだが、バッド・カンパニー内の重要度としてはそれほど注目される立場の人ではないだろう。クリムゾンでは曲がりなりにもリード・ボーカルとしてそれなりにがんばっていたが、そもそもそれほど優れたボーカリストではないし、クリムゾンに入ってから初めてベースをやったという人なので、プレイヤーとしてもさほどの力量はないだろう。その上、曲作りには興味がないということなので、なにが取り柄なのやらわからないミュージシャンではある。当然、あのポール・ロジャースを差し置いてボズがボーカルを任せられるわけもなく、要するにベーシストとしてバンド入りしたわけだが、クリムゾンでの付焼刃の経験では全く力量不足だったようで、バッド・カンパニー入りしてからの短期集中トレーニングにてベーステクニックを身に付けたとも言われているらしい。それでよくバンドに入れてもらえたものだと思うが、単純に気が合ったとかそんなことだったのかも知れない。

 ボズがいるからといって、バッド・カンパニーとクリムゾンの音楽性になにか共通点があるのかといえば、あるわけもない。そもそもボズとクリムゾンの音楽性に共通点がないのだから、当たり前の話だ。ボズがクリムゾンにいたこと自体が間違いのようなもので、それは言うなれば氷川きよしがサザンで唄っているようなものか。

 ボズにとっては居心地がよかっただろうバッド・カンパニーは、まさに彼好みのブルース色の強いバンドで、とてもとてもシンプルな音作りだ。シンプルで切れがあり、力強い。クリムゾンとはかけ離れたところにあるような音楽だが、クリムゾンに劣らず渋くて格好良い。クリムゾン好きのうちどの程度の人がバッド・カンパニーを好きなのか分からないが、私個人としてはかなり好きである。なによりもポール・ロジャースのボーカルがいい。レッド・ツェッペリン好きの、とりわけロバート・プラントのハイトーンのボーカルが大好きな知り合いに言わせると、ポール・ロジャースのボーカルはなにやら演歌調に聞こえるというが、なんでもよろしい。私はロバート・プラントよりポール・ロジャースだ。

 ついでに言うと、後にポール・ロジャースがツェッペリンのジミー・ペイジと共にファームを立ち上げた時、「つまらない」と言ったのはおそらくツェッペリンのファン達だったに違いない。ジミー・ペイジの活躍の場をでしゃばりオヤジのポール・ロジャースが奪っていると思ったのだろう。先進的なペイジのギターに、古くさいこぶしを利かせたロジャースの唄はミスマッチだと言うのだ、きっと。まあ、気持ちはわからないでもないが、ファームってそんなによくないのか?私はそんなに悪くないと思うのだが。

 バッド・カンパニーの音楽には広がりとか意外性とか斬新さとかいったものは特にない。言うなればマンネリで、そこかしこに似たような曲が転がっているが、マンネリの気持ち良さというものも世の中には存在するのだ。その良い例がバッド・カンパニーなのである。たぶん。

 クリムゾンとか、ザッパとか、ちょっと複雑な音楽を好んで聴いていると、時々単純な音楽が恋しくなるものだ。そんな時はバッド・カンパニーがいい。人生にはメリハリが大切だ。複雑なものと単純なものとを適度にちりばめて、生活のバランスをとる。どちらかに偏らず、中庸を心がけることが大切だ。そんなことにも役立つ、シンプルなバッド・カンパニーである。

 バッド・カンパニーを語る時にはおそらく普通はフリーについても触れるものかも知れないが、私はあまりフリーを聴かないし、バッド・カンパニーのほうが言わば進化した完成形だと思うので、今後もフリーについては書く予定がございません。あしからず。

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