フランク・フリップ
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ファミリー 〜Family〜

 ファミリーはブリティッシュ・ロックの生んだ名バンドだと言われる。といっても、アメリカでは売れなかった。だから世界的には知名度は低いし、ファミリーの曲の歌詞をネットで探そうと思ったって、見つかりっこない状況である。だが、クリムゾンファンであればもちろんこのバンドの存在ぐらいは知っているだろう。ジョン・ウェットンがクリムゾンに加入する前、1年ほど正式メンバーとして参加していたことは、もちろんクリムゾンファンの常識である。

 ファミリーの音楽は、一応プログレッシヴ・ロックに分類されるようだ。英語版のWikipediaで見たらそう書いてあった。でも、その分類の仕方には少し首を傾げたくなる感じもある。傑作と言われるファーストアルバム『Music In A Doll's House』などは確かにちょっと変わっているから、そのあたりの印象が強くてプログレとされてしまったのかも知れない。革新的という意味では当てはまるかも知れないが、クラシックの要素を取り入れてるとか、大仰で大曲主義とかいったタイプのプログレとは全く違う。フォーク調であったり、ブルース調であったりというイメージが強いんだが、結局なんだかよく分からない。実験的であるとはおそらく言えず、曲はいたってメロディアスだ。まあ、なにはともあれ、いい。凄くいい。私としては大好きなバンドである。

 ファミリーは、ロジャー・チャップマンとジョン・“チャーリー”・ホイットニーが中心となって作り上げたバンドで、他のメンバーははっきり言って脇役のようだ。実際、結成から解散までファミリーに在籍していたメンバーはこの2人のみであるし、曲作りもこの2人がほとんどを担っていた。

 そして、ファミリーの第一の特色はなんといってもチャップマンのヴォーカルだ。いぶし銀とはよく言われるが、なんとも泥臭くて小汚いイメージのしわがれ声、あまり聞いたことのないようなヘンチクリンなヴィブラート、それがたまらなく魅力的である。存在感の固まりと言ってよい。彼らの作り出す音もまた泥臭いけれど、泥臭い中にも個性的で斬新な面白みがある。だが、言い換えれば洗練されていない、おしゃれじゃない音とも言えるから、そのあたりがアメリカでウケなかった理由のひとつかも知れない。今まで、ファミリーのメンバーがどんな顔をしているかなんてほとんど知らなかったけれど、今回調べてみてとても納得ができた。ロジャー・チャップマンの顔はいかにもあんな声を出しそうな無精髭面で、デビュー当時から前髪の生え際は寂しくも激しく後退しているし、服装だってあまりにもそこら辺の労務者風で、ビジュアル的には華やかさのかけらもない。他のメンバーもそろってむさくるしくて、要するにみんなの憧れるスターの姿ではないから、アメリカには不向きだったのだろうと思う。

 ジョン・ウェットン在籍時のアルバム、『Fearless』と『Bandstand』は、ファーストアルバム以来の傑作だと言われるが、『Fearless』については私はそんなに良いとも思わない。ウェットンが少しヴォーカルをとっている曲があるが、それがどうにもファミリーサウンドの中で浮いてしまっていると思える。曲自体もどうもまとまりにかけて、ぼやけた印象のものが多い気がする。そこへ行くと、『Bandstand』では、ウェットンの声はほとんど聞こえずに本来のファミリーらしさが戻っているし、グッと曲が締まり、キレ、メリハリもあって、完成度が高い。このアルバムこそがファミリーの到達点だと思う。このアルバムとファースト、それからセカンドの『Family Entertainment』、この3枚がファミリーのベスト3だと私は勝手に決めている。なんとも心に染みるような曲もいろいろとあるし、そりゃもう泣けるのだ(例によって本当は泣かないけど)。

 意外と人気があるのか、なぜかCDは日本でもずっと手に入れやすい状況が続いているファミリーなので、ジョン・ウェットンが在籍していたマイナーなバンド、という認識だけで聴いたことのなかった方は、フトコロに余裕があったら是非聴いてみて頂きたい。

 ところで、ウェットンがファミリーに在籍していた時、ロバート・フリップから二度、クリムゾン加入への誘いがあったそうである。二度目の勧誘の時にはクリムゾンは解散状態にあって、もちろんウェットンは了承してクリムゾン入りしたわけだが、一度目の時は、クリムゾンはまだアイランドのメンバーで活動中だった。当時のクリムゾンは、フリップ以外のメンバーが結託して、バンドの支配権をフリップから奪い取ろうとやっきになっていたところで、フリップとしては自分の味方になる人間を入れたいという思いが強かった、と、ウェットンは解釈している。フリップとは仕事をしたいと思っていたけれど、ファミリーとはうまくいっているし、今クリムゾンに入って他のメンバーと良い関係を築けるとも思えないから、その時は断ったのだという。結局その判断は正しかったのだろう。おかげで、『Bandstand』という傑作アルバムも出来上がったことだし。どのぐらいウェットンが貢献しているかわからないけれど、きっとウェットン抜きではここまで良いアルバムには仕上がらなかったのではないか。ウェットンの抜けた次のラストアルバム、『It's Only A Movie』の物足りなさからすると、そう思わざるを得ない。

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