フランク・フリップ
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ブランドX 〜Brand X〜

 やっと出たホイのブランドX。ちょっと遅かったかな。

 ブランドXイチの有名人といえば、もちろんフィル・コリンズ。ピーガブの抜けた後のジェネシスで頑張っている最中に(“もなか”と読まないように)、彼が提唱して始めたグループだと言われていたりもするが、どうやら、メンバーとして最後に呼ばれたのがコリンズだという話が本当のようだ。とにかく、初期のリーダー的存在はフィルではなくて、ロビン・ラムリー(キーボード)だそうだ。

 それぞれ食い扶持は他で確保出来る一流のミュージシャン達が、空いた時間を使って、ただ純粋に演奏を楽しむためにだけに活動するバンドがブランドXだ。言うなれば、クラブ活動みたいなもんで、パーマネント・バンドというよりはセッション的色合いが強い。ゆえに、曲ごとにメンバーがちょこちょこと変わったりする。極く初期にはビル・ブラッフォードもセッションに参加したことがあるらしいが、レコーディングには至らなかった。売る事を考えてないから、曲は基本的にインストゥルメンタルばかりで(フィルが歌ってる曲もちょっとだけある)、リスナーに媚を売るような、甘いバラードなんてものはもちろんない。ひとことで言えば、ジャズ・ロック。海の向こうでは、ジャズ・フュージョンなんて言い方をされているようだが、日本ではジャズ・ロックの最高峰との呼び声も高いのが、このブランドXだ。

 ファースト・アルバム『Unorthodox Behaviour』の凄さは、なんとも形容のしようがない。わけじゃなくて、形容のしようはあるんだけれど、私に形容する能力が無い。ともかく、凄まじい演奏力だと感じる。とりわけ、フィル・コリンズの“超絶”と評されるドラムにはとっても驚いちゃう(表現力不足)。ジェネシスの音楽にはおそらく不必要なテクニックを、鬱憤を晴らすかのようにこれでもかと披露しているようで、自分が思いっきり限界まで叩けるように曲を作りました、といった感じがする。

「俺はここまでできるんだぜえ」

 と、燃えに燃えてる漢(おとこ)、フィル・コリンズ。ポップスターまでやっちゃって異常に忙しかっただろうに、ちゃんと最初の解散(というか自然消滅か)までは付き合った(それとも、ソロで売れたのはその後ぐらいだったかな)。

 名盤ファースト・アルバムに欠かせないのはもちろんフィル・コリンズのドラムだけれど、パーシー・ジョーンズのフレットレス・ベースもこのバンドの個性として絶対に欠かせない存在だ。ギターのジョン・グッドソールとともに最初から最後まで(復活版まで)ブランドXを守り切った(まだ過去形じゃないかも知れない)。

 ファースト・アルバムの『Unorthodox Behaviour』というタイトル曲は、ブライアン・イーノの大傑作サード・アルバム『Another Green World』中の一曲『Over Fire Island』と全く同じように始まる。イーノのこのアルバムでは、フィル・コリンズとパーシー・ジョーンズがセッション参加しているが、ブランドXの立ちあげと、このイーノのアルバムのレコーディングがおそらくほぼ同時期のようなので、

「両方に使っちゃえ〜」

 てなノリで入れちゃったもんなのだろうな、きっと。悪く言えば、どちらかがやっつけ仕事なのに違いない(たぶん、イーノの方)。

 結局、ブランドXはファーストを越える作品を出せなかったと私個人的には思うが、でも、時代時代でそれぞれ少しずつアルバムの個性を変えて、それなりに面白い音楽を作ってくれている。しばらく解散状態だったものが、思いだしたようにポツポツとアルバムを出して、それが意外な方向性だったりしてなかなか面白い。『Manifest Destiny』なんてちょっと大味で、これがブランドXか、と思ったけれど、これはこれで新しい色がまた楽しい。

 パーシー・ジョーンズはとても個性的ですごいベーシストのようだが、Tunnelsやソロなどの彼のリーダー・アルバムというのは、どうにも地味で退屈だ。グッドソールというギタリストも、あとほんのちょっと何かが足りない感じがしないでもないが、この二人が一緒になると、それなりに上手い調合具合になる。もうちょっと華のあるメンバーにも加わってほしい気もするが、他のオリジナル・メンバーがすっかり興味を失ってしまったっぽいブランドXを守り続けるこのお二人は、とりえあえずえらい。ぜひもう一踏ん張り、頑張って頂きたい。

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