フランク・フリップ
ホーム      前へ INDEXへ 次へ
ボストン 〜Boston〜

 ポストンではない。ポストンは郵便局のイメージキャラクターである。民営化されたらポストンはどうなるのか。未だそこまでの議論は尽くされていないのではないか。郵政民営化が実現したら小泉首相はポストンをどうする考えなのか。

 なんてことはどうでもよくて、ボストンである。昔流行ったバンドだ。今存在するかどうかさえ私は知らない。全くもってなにもタイムリーじゃないと思う。むしろ、ポストンの方がタイムリーだ。

 ボストンは産業ロックの代表みたいに揶揄された存在だったが、意外とプログレ好きのインテリ層にも人気があったりして、実はアメリカン・プログレッシヴ・ロックと分類されていることも少なくない。でも、プログレだと言われると、

「え?」

 という声を発してしまうほど、典型的なロックのような気がしていた。

 私が人生で最初に買ったLPこそ、ボストンのデビューアルバム『幻想飛行 / Boston』だった。中学3年の時だった。買ったのはこれが最初だが、最初に聴いたボストンのアルバムはセカンドの『ドント・ルック・バック /Don't Look Back』だった。YMOから始まった私の音楽鑑賞趣味もすぐに洋楽に移り、当時は自分好みのアーティストを捜すことに夢中だった。なにせ、洋楽に対する知識はほとんど皆無だったのだ。洋楽好きの友達を見つけては、

「なんか、いいやつ貸して」

 と、声をかけてまわっていた。そうやって親しむようになったアーティストが、カンサス、ジャーニー、ポリス、イーグルス、フォリナー、クイーン、そしてボストンなどであった。ちなみに、薦められたものの、当時はあまりピンと来なかったのは、フーやレッド・ツェッペリンだった。ついでに言えば、キング・クリムゾン、イエス、ピンク・フロイド、ELP、ジェネシスという、いわゆる5大プログレとの出会いはこの時はまだなかった。

 レコードを傷つけられることに多大な警戒心を抱いている友人から、

「丁寧に扱ってよ。前に友達に貸したらひどい傷を付けられて頭に来たんだから」

 という言葉を添えられて貸り受けた『ドント・ルック・バック』は、呆れるほどに擦り切れた最悪の音質だった。音も悪かったが、その音楽性も実につまらないと思った。当時の私の頭の中にあった一般的な洋楽ロックの音のイメージをそのまま体現しているのがボストンだった。これぞ世の中に氾濫する“あたりまえロック”の典型的な音だと思った。歌詞を見ても、深みに欠けたどうということのないもののようだし、曲は皆同じに聴こえた。

「なんてつまらない」

 私は失望した。テープにダビングしたものの、ブチブチと雑音だらけだし、すぐに消しちゃおうかと思った。それでも、せっかく借りたんだし、と思いながら無理して聴き続けていると、間もなく、私の中で変化が起こった。

「あれ?」

 それまでどれも同じようなつまらない曲にしか聴こえていなかったものが、急激に良くなってきた。私好みの音じゃないはずなのに、なんだかやめられなくなってきた。聴けば聴くほど好きになってきた。

「こりゃたまらん」

 そして、友達から借りることの出来なかったファーストアルバムを自分で買うことに決めた。初めての自分のレコードに針を落とした私は、のっけから『More Than A Feeling』に痺れた。1000万枚以上売れたというこのアルバムは、その実績に恥じぬだけの内容を誇っている。

 ボストンの音は一見、もとい、一聴、個性の薄いアメリカン・ロックと思っていたら、こういう音は当時新しかったようである。それぞれの曲のまとまりが良いのですんなりと聴いてしまうが、よくよく聴くとなかなか面白いアレンジをしてあったりして、なるほど、こういうところがプログレ扱いされる所以なのかとだんだんとわかるようになった。とはいえ、いわゆるブリティッシュの純正プログレからすれば、こんなのはプログレとは言えない。カンサスなどのアメリカン・プログレと比較してもやっぱりプログレとは言えないだろう。でも、ジャーニーをプログレと言うのならボストンもプログレかも知れない。

 ボストンはMIT(マサチューセッツ工科大学)出身のトム・ショルツさんがほとんど全てのイニシアティブをとって作り上げたバンドだ。いうなれば、マット・ジョンソン率いるザ・ザみたいなもんで、良しも悪しくもボストンはショルツさん次第である。ただ、マット・ジョンソンと違って、トム・ショルツはヴォーカルをとれないから、ヴォーカリストの存在は重要だ。そのヴォーカリスト、ブラッド・デルプは非常に優秀で、ボストンの成功は彼の存在に負うところも大きいだろう。もちろんそれだけでなく、他のメンバーの演奏力も優れている。

 ボストンといえば、異常なる寡作というか遅作で有名だが、セカンドからサードアルバムまでのインターバルは8年もある。ひとえに完璧主義者トム・ショルツのこだわりから遅れに遅れたとも言われるが、その間にボストンはアルバム製作契約の不履行だとしてレコード会社に訴えられたりしている。8年もかけてついに納得できるアルバムを世に出したのだから、サード・アルバム、その名も『サード・ステージ / Third Stage』はどれだけ素晴らしい作品だろうかと期待した。当時私は大学生だったが、我が大学にもボストンファンは大勢いたらしく、大学生協のCDコーナーにはこの新譜が山積みだったのを覚えている。

 で、いざ聴いてみれば、なんだかとてもつまらなかった。まず、音に元気がない。トム・ショルツとヴォーカルのデルプ以外のメンバーは総入れ替えだというから、原因はそこら辺にあるのかも知れない。そして、とにかく曲がマンネリすぎる。ボストンといえば以前から似たような曲がズラッと並んでいる印象だが、さすがにそれが3作目ともなるといいかげん飽き飽きする。ボストンのアルバムは1.2作ともトータル35分ぐらいの短さだったが、3作目も同じ。

「8年かかって、似たような曲ばかりで35分かよ。8年もなにやってたんだ」

 と、がっかりした。本来、私がそれほど好むタイプのバンドでもないはずなので、ボストンとの付き合いもこれまでかと、以降のアルバムは聴いていない。そもそも、その後のアルバムは出てるのかいなと調べてみれば、なんと、また8年経ってから4枚目、さらにまたまた8年経ってから5枚目を出していた。どちらもファンには評判がいいみたいだから、気が向いたらそのうち聴いてみよう。それにしても、ものすっごいリリースペースだ。このペースでいくと、次作は2010年発表ってことになるが、まだやる気はあるのか。まあ、私としては多分どうでもいい。

 クリムゾンとザッパが好きな私が聴くべき音楽じゃなさそうなボストンなんだか、どういうわけか、ファースト、セカンドはとても好きだ。どうしてなのかなあ、と自分でもいつも首をひねっている。

ホーム      前へ INDEXへ 次へ