出不精が行く!!
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イタリア失業旅行記 〜その11 ヴェニスだす〜

 うまいタイトルが付けられなくなってきた。訪ねた街を大ちゃん風に言ってみただけだす。

 ボルツァーノからヴェニスに来るまで電車に何時間か乗っていたけれど、1時間ほどコンパートメントが一緒だった二人組のご夫人方は想像を絶するようなおしゃべりで、たとえるなら宮川大助・花子ならぬ宮川花子・花子といった状態。全く誇張無しで、1時間の間に5秒と会話が途切れる事は無かった。もちろん大声である。大阪人とイタリア人が似ていると言われるわけも良くわかる。

 というわけで、水の都ヴェニス=ヴェネツィアに来たが、どうしてヴェニスとも呼ばれるのかといったことを割と知らない人も多いだろうから調べてみると、ヴェニスはヴェネツィアの英語名である。以上。

 街全体がテーマパークみたいなところなので、その観光客の多さといったらこれまで訪れた街の中ではピカ一である。“ピカ一”は“ぴかあ”ではなくて“ぴかいち”なので念のため。

 この街には車が無い。車道の代わりに水路が走っていて、交通手段は船だけである。現代の世界にあって、こんなユニークな街も他にはないだろうから大観光都市になるのも当然だが、ここは面白いばかりではなくてとても美しい。水路の水は淀んで汚く、また、蚊が多いのにはまいったが、それでも歴史的な建造物の宝庫で、周辺の島々にもちょっと見飽きてしまうほどの数の寺院が建ち並んでいて、なんとも現実離れした光景だ。私は実際見飽きてしまって、もうどうでもいいという感じだったが、それでもやはりここは夢のような空間なので、特に日本の新婚カップルなんかが多くいるのは致し方ないと思った。別に仕方ないと否定的に思う必要もないが、ただ、ちょっとミーハーっぽいという感じはある。とはいっても、イタリアまで来たならここへ来ないのはやっぱりもったいないとは思う。

 世界中からやって来ている観光客の数にはさすがにうんざりするが、大観光地なので店が多くて物を買うには良い。私はここでお土産をまとめて買い、また、イタリアへ来てから初めてアイスクリームを食べた。いわゆるイタリアン・ジェラートというやつで、確かにうまい。しかも安い。もしもそこにアイス好きの妻が一緒にいたとすれば何度も食わされたことだろうが、私自身はべつにアイス好きというわけでもないので、これが最初で最後のイタリアン・ジェラートになった。

 中心のサン・マルコ広場に来ると、またまた人だらけだ。おまけに鳩だらけでもある。見渡す限り、人、人、鳩。人、鳩、鳩。鳩、人、鳩。という感じ。見渡す限りというのはちょっと嘘である。サン・マルコ寺院も豪華な建物だ。ゴンドラも何もかも、ここはとても華やかである。ただ、その華やかさ、美しさというのがいかにも西洋的なわかりやすい美だなあと改めて思った。日本人の静かなる美意識の深さを再認識させられる。

 さて、大変面白いところではあったが、さほど書く事はない。というわけで、話が尽きた。仕方ないので、次の日の分まで書こう。

 次なる目的地はアルベロベッロという街だ。そこへ行くためにはまずバーリという街へ行かなければならない。だが、バーリはヴェニスからは数百キロも南にある。ブーツ型をしたイタリア半島の臀部にあるのがヴェニスだとすると(ブーツに普通尻はないが、イタリア全体を下半身だと見立てた場合の話)、バーリはかかとにある。要するに翌日は丸一日電車に乗っているだけの完全移動日だった。

 ヴェニスの宿で蚊に刺されまくり、全身を掻きむしりながら電車に乗り込んだ。向こうの電車はだいたいそうだが、コンパートメントは4人掛けの完全な個室状で、見知らぬ人と向かい合いながら長時間を過ごす。私の場合、日本人同士だったとしてもたいして話はしないだろうが、イタリア人と一緒になればなおさらダンマリである。途中で何回か乗客は入れ替わったが、多くの時間を伴にしたのはバルバラという名の赤ん坊を連れた若い夫婦だった。もちろんその子の名前は私が尋ねたわけではなくて、夫婦の会話の中で聞き取ったものだ。

 バルバラは私の服をあちこち引っ張った。その度に母親は「バルバラ!」といって赤ん坊の手を引き離そうとする。バルバラと私の目が合って私は微笑む。父親は物静かで優しそうだ。イタリア人が皆両手を拡げながら声を張って話しているわけではない。特にこの男性はシャイなようだ。母親の方が元気が良い。バルバラは可愛かったが、数時間も一緒にいるにはちょっとうるさかった。まあ、元気な赤ん坊なのでしょうがない。

 辿り着いたバーリという街は、大都会だが観光客にとっては特に何があるというところではない。多少の歴史的建造物もあるようだが、わざわざそれを目当てにやって来る人はそうそういないだろう。普通の人々が普通に生活をしている街、といったところだ。大観光地のヴェニスからやってきただけに、そのギャップが激しくて少し寂しい気分になった。おまけに日曜の夜に着いたせいか、駅前のレストランが全て閉まりきっていた。仕方がないので駅の中のセルフサービスの店で食事をとったが、それが寂しさに拍車をかける。明日は4万リラぐらい出して豪華な食事をしようと心に決めた私だった。

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